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記念事業

国文学専攻創立40周年・国文学会設立30周年 記念事業活動報告(からくり「傀儡師」とはなにか)

からくり「傀儡師」とはなにか

愛知県半田市亀崎には、潮干祭の時に山車の上で奉納上演されるからくり人形が、五つの組に伝承されている。そのうちの一つに田中組神楽車の「傀儡師」のからくりがある。傀儡師とは、江戸時代に首から箱を下げて諸国を巡遊した門付けの人形廻しのことである。その傀儡師が、人形を操るところを、からくり仕掛けで演じてみせるのが、このからくりである。「傀儡師」のからくりは、かつては竹田からくりの代表的な演目の一つであった。現在、管見に入る限りでは、寛保元年(一七四一)三月より九月頃まで、江戸堺町勘三郎芝居向かいで竹田近江大掾の興行した演目の中に、「傀儡師の人形からくり舟弁慶にかはる」(『我衣』)とあるのが、初出かと思われる。竹田からくり「傀儡師」の画証は、宝暦・明和期までまたなければならないが、これらによって、我々はかつてのからくり人形の動きを類推することができる。
そして、これらの絵画資料を詳細に検討すると、現在、田中組に伝承されている「傀儡師」との間に、からくり全体の構成、人形の一つ一つの動きに至るまで多くの類似点を指摘することができる。
その意味で、この田中組の「傀儡師」は、竹田からくりについて研究するうえできわめて貴重なからくりということになる。約二百五十年の時の流れを越えて、竹田からくりの醍醐味を我々に伝えてくれているのである。近年の調査の結果明らかになった、人形の動きや演技の復元も併せて、田中組「傀儡師」を通して、竹田からくりの世界に迫ってみたい。
田中組「傀儡師」の概要
「傀儡師」は、大きく分類すれば、唐子踊りと舟弁慶、山猫廻しの三段からなっている。
最初は、傀儡師人形の持つ箱のなかから、中国風の衣裳を着た唐子人形が箱の上に登場し、手に持ったシンバルのようなチャッパを打ちあわせながら踊る。やがて、唐子の人形は箱の中に納まる。
次にお囃子が変わって、傀儡師の人形の上半身が箱の中に折り畳まれて、やがて、そこに義経主従をのせた舟が現われる。
ここから謡の詞章にあわせて舟弁慶の場面となる。義経、弁慶をのせた舟の上では船頭が櫓を巧みに操っている。やがて、波間より平知盛の怨霊が出現し、薙刀をさまざまに使い足拍子を踏みながら、義経主従に怨みをなす。長絹を脱いだ義経は、太刀を抜いて知盛に立ち向かう。弁慶は、打ち物技ではかなうまいと、数珠を押し揉んで、知盛の怨霊を祷り伏せる。
そして、知盛が波間に消えると、舟弁慶の場面は終わり、舟が姿を消すと、箱はもとに戻り、折り畳まれていた傀儡師の人形ももとに戻る。
その後、箱のなかからせり上がった山猫が見物の方に飛び出していく。
掲出写真は国立国会図書館所蔵『機関竹の林』所収「大からくり傀儡師當舩弁慶」である。
(注)この文章は、からくりのリーフレットに掲載された「竹田からくりの世界-田中組傀儡師の復元上演-」の引用である。
なお、このからくりについての詳細は、拙稿「竹田からくり『傀儡師』について-フィールドと文学史の接点-」(『歌舞伎研究と批評』十二号)、「田中組『傀儡師』の人形とそのからくりの構造」(『同志社国文学』四十号)をご参照ください。(山田和人)
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